となりのレン話(仮)ちゃん④
本家レン話の擁護者も、血の池地獄ウォッチャーも静かなので、公認アンチの私が塩を送ってやる、という風に見せかけた入院までの暇つぶしである。
さて、わが事業所のレン話ちゃん。
こういうご夫婦のケアマネジメント依頼を受けた。(秘密保持の観点から、フェイク入れて書く)
ご主人:難病で余命1年の宣告。認知症のような症状あり、自力では歩けない。車椅子生活。もともとはアクティブで、ゴルフや社交ダンスがお好き。
奥様:未治療だが、中重度の認知症疑い。夫の面倒を見るのは自分という気持ちが強く、外部からのヘルパーも実の娘の介入も拒否。認知症治療をしていないのは、ご主人が発病前、「精神科の薬なんてもっての他!迷惑かけても家においてやれ」と言ったから。
娘:県外在住。母親のことは「同じ空気すうのも嫌」という関係。父親に対してはこじらせた感情があり、死ぬ前にダンスやゴルフをさせたい、が希望。
娘さんからの依頼は、「2人とも家で生活したいというので、家で生活出来るプランを頼みたい。」
まああるあるである。
ここでの課題は、まず以下の通り。
①娘さんは県外から来る。折しも緊急事態宣言発令か、という時期で、一旦休養も兼ねて帰ることになっている。
②夫を見ることにこだわる妻が、寝ている夫の口にコッペパン1本突っ込んで窒息死未遂になるほど、認知症が進んでいる。しかし、外部からの介入は断固拒否。
③夫も認知症様症状があり、本人が考えているようなアクティブな活動はもう出来ない。
さて、どうするか?
ご主人の病気と認知症未治療の奥さんを同じ場所で生活させる、はほぼ無理ゲーである。病気でご主人の寿命がくるか、奥さんが寝ているご主人の口にパンやら焼き芋から突っ込んで窒息死させるのが早いかだ。
娘の介入も嫌がる奥さんがいては、家政婦兼介護士の24時間滞在も難しい。何より最低でも1か月30万の負担だ。
費用は介護保険適用の範囲内。運動・余暇活動はごく軽いもの。娘さんがいない間の見守り・体調管理を中心に、時には宿泊サービスも、が無難。
となると料金サブスク制の「小規模多機能型居宅介護」(通い・泊まり・訪問がワンストップで提供され、介護保険負担分は月額制)にお2人ご利用が無難。
レン話ちゃん(仮)に「どうしたらいいですか?」って聞かれたから、そういう方法もあるよ、という程度で答えたら。
「余命わずかな中、ダンスしたい、ゴルフしたいって言ってるんですよ!やらせてあげないなんて、それでも専門職ですか?!リハビリが優先です!」
メダマドコー。
余命1年、車椅子生活の難病の人に、リハビリさせてゴルフにダンス?!コンニチハアタマダイジョブデスカ!!
よほど自信があったらしく、レン話ちゃんはそのプランを実行に移した。いきなりマシントレーニングが売りのデイサービスにご主人と乗り込み、施設OT とPTを押しのけてトレーニングメニューを作り、この通りにしろ!と命令。食事含めて起きてるのは1時間くらいが限界のご主人を無理やりレクに投入。
これを週4回。どんな拷問なんだ。
ご主人は1週目でギブアップした。
プランに無理があったんじゃない?自宅生活中心で見直したら?と言ったら
「あの利用者さん、余命が短いからって諦めてやる気がないんです。あの利用者さんが悪いんです」
……レン話ちゃん(仮)の名誉のために言っておこう。レン話ちゃん(仮)は、これでも介護業界歴20年なのだ。