あの日見たポンコツ新人名前を僕達はまだ知らない④
そんな新人にも、いよいよ新規依頼が来た。
90代女性 独居 右上腕骨骨折後
高齢であることから手術は行わず、固定で経過観察し、契約時には治癒。可動域制限もなく、身の回り動作はほぼ自立。市内にケアマネをしている娘がいて、土日は買い物等で訪問する。
90歳すぎて独居生活を維持しているので、大変気丈な方で、娘さんが提案する訪問介護やデイサービスはいらない、庭に作った家庭菜園の手入れが希望である。
ご自宅は古式ゆかしい日本家屋。上がり框の段差があるので、置型手すりをおく、浴室には浴槽グリップとシャワーチェア、という提案を同行した包括の主任ケアマネが提案。訪問介護については、やんわり拒否された。心配した娘さんが、ポンコツに「母に使うように説得してください」と言った。
説得してください、に他意はない。訪問した時にケアマネさんからお声かけください、くらいのニュアンス。それをポンコツは、説得して何がなんでも使わせなくては、と思ったらしい。
「柴犬さん、説得しなくちゃだめですよね?」
いやいやいや。あーた、主任ケアマネと同行して何見たの?主任ケアマネの話では、確かに身の回り動作は自立だけど、腕の骨折は2回目で、お年相応に足が弱ったのが心配だから、しばらくヘルパーさんに入ってもらいたい、が娘さんの希望って聞いたよ。
でも、本人がそれを要らないっていうのは、ケガも治ったし、ひとりでやって見たいって気持ちがあるからでしょ?これらの情報から見立てと手立てを考えるのが仕事!なんでいきなり娘のいうこと聞かせるが前提なの?
訪問介護については、もうひとりいる娘さんがしばらく泊まり込みが出来る、ということで一旦保留。さて、問題は「家庭菜園の手入れをしたい」。
自宅内は1点杖だが、屋外に杖で出て、畑で野菜を取ってくると片手が塞がる。しかも庭先は細かい砂利が敷かれていて、足元が滑る可能性がある。
餅は餅屋、で福祉用具専門相談員に依頼。
オフロードタイヤ、ではないがシルバーカーで、舗装されていない道でも比較的安定するものがあるそうな。カゴ付きなので、野菜を入れて帰れます、とな。
だがポンコツは、いきなりそれに反対しだした。
「四点歩行器にすべきです!腕のリハビリにもなりますから!」
待て待て待て待て!
利用者さんは上腕骨骨折後だぞ。持ち上げて下ろす動作は、いくら軽めとはいえ難しいぞ。しかも庭先は砂利が敷いてあるんだ。歩きづらいだろう。
「あの福祉用具専門相談員は、リハビリをわかってないんです。ここは四点歩行器がただしいんです。」
いやあの。ケアマネはオールドラウンダーじゃないから、ワイはその道のプロに任せる方だけどさ。すごい自信だよね。まああれだ。利用者さん本人に両方使ってもらって選べばよくない?
結果。シルバーカーが選ばれました。
確かに屋外で四点歩行器使う方もいなくはないけど、主に使う場所や本人の身体状況に合わせるのは、福祉用具専門相談員のが得意でしょう。なぜそんなに相手が間違ってる!みたいな勢いなんだ。
福祉用具専門相談員に元カレ取られたのか?